雄水の三木記念賞受賞を祝う会

雄水の三木記念賞受賞を祝う会

今年の暮れは愚図ついた日が続きましたが、クリスマスの12月25日は一転しカラッとした晴天となりました。この日、倉敷のアイビースクエアで雄水の「三木記念賞受賞を祝う会」が行われました。

主催は岡山県備中神楽保存振興会内の「津村雄水、三木記念賞受賞を祝う会」で、約50名ほどの方々が祝いに駆けつけ、雄水との歓談の時を過ごしました。

参加者は、県の中でも伝承的文化にも力を注ぐ議員さんの方々、また雄水の面のお弟子さんや雄水が大学を出て最初に受け持った教え子の面々、また親族や備中神楽保存振興会で共に運営を続けてこられた仲間達でした。

三木記念賞の受賞メダル・同賞状などを会場に展示、雄水が面を打ちはじめて中堅となった頃からのテレビ放送の一コマやお弟子さん達との懐かしい映像のスライドショウがあり、皆さんから花束贈呈や暖かい言葉を頂きました。宴の最中には雄水作の「面」での舞も披露され、そのまま会場に躍り出て吉備団子のふるまいもありました。

締めは、雄水の謝辞でした。受賞後、一時入院するなどしていたため心配していましたが、そんな心配も余所に10分近く今回の受賞の感慨を述べました。印象に残ったのは1979年に国の重要無形民俗文化財に指定されているにもかかわらず、これまでの「三木記念賞の受賞者」に「神楽関係者がまったくいなかった」こと、そして、今年になって二名もの神楽関連で受賞者が出た、という話でした。

神楽どころは多々あれど、岡山の備中神楽はその歴史と伝承の在り方、他所との比較などから特異な民俗芸能として知られています。しかし、岡山の地元での評価がいままであまりなく、やっと「神楽を支えてきた人達」に注がれたということでしょう。

神楽は、舞う人見る人、そして支える人で成り立ち、そして皆で楽しみ豊饒を願うといものです。いわずもがな、今回の会場には余り若い人の姿はありませんでした。この受賞を契機に、若い方々が備中神楽の魅力に気がつき、備中神楽の「根」を深くしていってくれることを心から願うばかりです。

写真撮影:鈴村邦之さん

管理人 津村 カツシ

雄水「三木記念賞」受賞、山陽新聞に掲載

雄水「三木記念賞」受賞、山陽新聞に掲載

暑さも盛りの8月13日、山陽新聞朝刊に「三木記念賞」の受賞者発表があった。受賞は神崎宣武(かんざき のりたけ)さん、馬建鋒(まけんぼう)さんとともに津村雄水(つむらゆうすい)も含めて3人と報じられました。雄水は神楽面の面づくりと後進の指導に力を入れていましたが、神崎宣武さんも岡山備中神楽の書籍や実舞い講演などで度々登場される方で、両者の受賞は神楽関係者にとっても大いに励みとなることでしょう。

三木記念賞

三木記念賞は1968年に創設、地域の発展に貢献した個人・団体を顕彰する岡山県の賞。今回が49回目で11人と5団体の推薦から上記の3人に決定されたと記事にあります。

現在までに受賞された方々の中には、著名な彫刻家の平櫛田中や将棋の15世永世名人・大山康晴などが第4回・第11回に名前を連ねていらっしゃいます。文化部門の中には備前焼作家や備前刀刀匠、書家、洋画家、日本画家、木工芸家、彫刻家、陶芸家など多方面の作家が受賞していますが、いままでに「面打ち師」というのは登場していませんでした。

リオのオリンピックが現在開催中で盛り上がっていますが、オリンピックに参加できる種目が増減することは知られています。オリンピックで認定されていない特定の種目の選手は、スポーツの世界の祭典としての競う場を与えられていないともいえます。

実は、「神楽面」など口伝の技術継承を土台になりたつ「面」などは、「審査できる者がいない」という判断で美術的「創作のコンクール」や「作品展」などには「出品できない」あるいは「審査をしてもらえない」という「木彫り創作の作品」でもあったのです。

「評価をしてもらえない社会」の制度の中では「社会的指標」、つまり物差しや判断基準がなく文化の施設の「場」にそもそも登場できないという現実がありました。

今回の受賞で「備中神楽」の周りの人物達が社会的に評価され、2人も同時に受賞できたことは画期的なことと思っています。

まず、「評価される場」に立てるんだという土台を築いた大きな一歩のような気がします。これを機に、今後の民俗芸能の動向に大きな好影響があればいいですね。

管理人 津村 カツシ

津村雄水について

津村雄水について

津村雄水について

津村雄水(ゆうすい)(号)
本名 津村繁雄

面打師 雄水流宗家
元春山流宗家補佐
国指定重要無形民俗文化財・備中神楽 面打師

経歴

1929年11月12日生まれ
1952年から教職に就く。
岡山県岡山市立中山小学校・校長等、歴任退職
1990年、岡山県岡山市立一宮公民館・館長をへて
1994年、64歳から備中神楽面 制作を始める。
1996年より岡山市・新見市の公民館にて面彫刻・講師。
岡山3丁目劇場・備中神楽公演時などに面打ちの実演。
求めに応じて随時指導、講演・作品展示等を行っている。

岡山県 三木記念賞 2016年受賞
岡山県備中神楽保存振興会 副会長 2018年辞職

●主な面の仕事

○岡山市吉備津彦神社の要請で新春行事に使われる獅子舞の獅子頭 雌・雄 を奉納。
○岡山市より制作指名、思兼命の素彫り面を納品。これは岡山市主催「坪田譲治文学賞」第20回選考委員五木寛之氏ら選考委員5名へ記念品として贈呈された。
○岡山姉妹都市中国・韓国・台湾各国国際交流公式記念品20数面を岡山市に納品。
○新見市哲西町鯉ヶ窪の道の駅伝承館 特大素彫面 常設。
○吉備津の能「温羅退治」を基に芸能性を加味、新たに草案した「温羅神楽」にも雄水温羅面が使われている。

岡山にて 「かぐら面工房 雄水庵」 主宰